被災地における通信手段の確保について

年が変わり2024年1月1日に能登半島にて大きな地震がありました。

僕は京都に住んでおりますが、大きくはないものの長い横揺れを感じ、次第に大きい揺れに繋がるのではないかと恐怖を感じました。さぞかし現地にいらっしゃった方は想像を超える恐怖と不安だったことでしょう。

亡くなった方のお悔やみを申し上げます。安否不明の方の無事を祈ります。厳しい寒さの中の避難生活は辛いですが頑張ってください。そしていち早い復興を心より祈っております。

情報システムの仕事をしている身として気になるのが通信手段です。東日本大震災の経験から、電話は不通になってほとんど役に立たず、インターネットが最もマシという結論には至っていますが、果たしてインターネットもどれぐらい使えるのかというのは気になるところです。

BCPにおいて職員の安否確認の方法を確立する必要があります。被災時に仕事のことなんて考えていられませんが、病院や老人ホームでは職員がかけつけられるか否かが患者や入居者の命に直結します。

ニュースの記事から通信手段の確保について調べてみます。

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普段使っている電波は使用できない状態

まず、普段使っている電波について、これは震災の影響で今も使用できない状態が続いてるようです。

毎日新聞が良い感じにまとめてくれています。

ドコモとKDDI(au)の携帯電話は6日午後2時の時点で、石川県の七尾市、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の5市町の一部地域で、音声通話やデータ通信が利用できないか、つながりにくい状態が続いている。ソフトバンクは輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の4市町、楽天モバイルは七尾市、輪島市、珠洲市、宝達志水町、穴水町、能登町の6市町の一部地域で同様の通信障害が出ている。総務省によると、6日午後2時半時点で4社の計603の基地局が停波している。

各社の障害は地震が発生した1日午後4時10分ごろから続く。地震の揺れによって地中などに敷かれた配線設備が故障したことや、基地局の停電が原因だ。

こうした事態に備え、各社はいろいろな対策を取ってきた。11年3月の東日本大震災では最大約2万9000の基地局が停止し、約8割は停電が原因だった。このため一部の基地局には予備電源のバッテリーが配備され、県庁や市町村の役場などがあるエリアでは発電用のエンジンなども導入して停電しても通信が途切れない対策が取られた。

また、ドコモは大規模な災害に備え、半径7キロほどの広範囲をカバーできる「大ゾーン基地局」を全国に設置してきた。通常の基地局のカバー範囲は数百メートル~数キロにとどまる。北海道のほぼ全域が大規模停電に陥った18年9月の北海道胆振東部地震では、釧路市の大ゾーン基地局を全国で初めて稼働し、丸一日ほどの通信環境を確保した。

それにもかかわらず、今回の地震で障害が続いている。その理由の一つは、大ゾーン基地局の設置場所が各都道府県の人口が密集した2カ所程度に限られることだ。今回の被災地は石川県内に設置された基地局から遠く、カバー範囲外になっているとみられる。二つ目の理由は予備電源の多くは稼働時間が24時間程度で、今回は停電が長引き、「燃料切れ」となったためだ。

このため、通信各社は移動式の基地局に加え、移動電源車や発電機を被災地に向かわせ燃料切れを回避しようとしている。しかし、道路は各地で寸断され渋滞が起きており、これが障害の三つ目の要因となっている。KDDIの担当者は「人やモノはあるのに、渋滞がネックで運ぶのに苦労している」とこぼす。

固定電話の通信設備でも燃料切れが起きている。NTT西日本によると、6日午前9時の時点で輪島市や珠洲市の一部では非常用電力の枯渇によって、固定電話や光回線のインターネット接続サービスが使えない状態が続いている。

https://mainichi.jp/articles/20240106/k00/00m/020/137000c

使用できないのは基地局の停電と配線設備の故障が原因とのこと。そりゃ通信システムも完璧ではないので故障はします。

その対策としてバックアップ電源と、広範囲をカバーできる大ゾーン基地局の運用がありますが、バックアップ電源は24時間程で燃料切れになったことと、大ゾーン基地局の設置数が限られておりカバーし切れていない状況とのこと。

移動式の基地局や電源確保に動こうにも、道路が塞がっていたり渋滞が起きていたりと対応し切れていない様子です。

つまりシームレスにインターネット回線が繋がり続けるということはあまり期待しない方がよさそうです。

各通信事業者が取った緊急の対応

既存の基地局ではお手上げ状態、で済むわけなく、各通信事業者はあらゆる対応を取っています。

00000JAPANの開放

00000JAPAN (ファイブゼロジャパン) は、災害時にドコモ、au、ソフトバンクがキャリアの垣根を超えて無料開放する公衆無線LANサービスのことで、最初に使用されたのは2016年の熊本地震の時です。

災害時に無料で利用できるWi-Fi「00000JAPAN」が開放された。携帯大手3社の公衆無線LANスポットが利用できる。

Wi-Fiの接続先の名前(SSID)は「00000JAPAN」。対象は福井県、石川県、富山県、新潟県。

パスワードなし、接続時間の制限なしで利用できる。通信内容を保護する暗号化などセキュリティは施されておらず、業界団体の無線LANビジネス推進連絡会では、あくまで緊急時の安否確認や情報収集などの利用にとどめてほしいと案内。Webサービスへのログインに使うIDやパスワードの入力、金融系サービスの利用では、VPN(仮想プライベートネットワーク)や、HTTPSで保護されたWebサイトへの接続にするよう案内している。

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1558676.html

事前共有キー無しで接続できるため、誰でも簡単に使える一方暗号化がされていません。そのためIDやパスワード、クレジットカードなどの情報の送信には使用しないようアナウンスされています。

ただ、上のレイヤーで暗号化されていれば大丈夫なはずです。HTTPSで保護されたサイトであれば使ってもOKです。最近はほとんどのサイトがHTTPS化が進んでいますし、HTTPS化されていない場合はブラウザで「安全ではない」という表示を出すようになっています。

そこの区別がつかない人やわからない人はむやみに情報を送信しない方がいいですね。VPN使ってる人は元々リテラシーが高い人がほとんどでしょうし問題ないでしょう。

スターリンクの無償提供

KDDIは、衛星ブロードバンドサービス「スターリンク(Starlink)」の令和6年能登半島地震の避難所などに無償で提供する。石川県と総務省の要請を受けて実施するもので、KDDIはスペースXの日本法人であるStarlink Japanと協力して展開する。

7日には、350台のStarlink端末が石川県県庁舎に運び込まれた。避難所では、スターリンクを使ってWi-Fi環境が構築され、au以外の携帯電話会社のユーザーでも、無料でネットを使えるようになる。

(後略)

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1559170.html

スターリンクは衛生を利用した通信です。Starlink端末は電源さえあれば衛生と通信をしてWi-FiのAPとして機能するようなのでかなり有効そうですね。

船上基地局

NTTとKDDIが船上基地局の運用を開始するようです。

NTTドコモとKDDIは、6日午後、船上基地局の運用を開始する。令和6年能登半島地震を受けた共同での取り組みで、石川県輪島市町野町沿岸付近において、ドコモ回線(MVNO含む)、au回線(UQ/povo、MVNO含む)が利用できるようになる。

今回の船上基地局は、NTTドコモグループのNTTワールドエンジニアリングマリンの海底ケーブル敷設船「きずな」にドコモとKDDIの携帯電話基地局を設置したもの。

NTT(持株)とKDDIは2020年9月、それぞれが保有するケーブル敷設船に互いの基地局設備を搭載することで連携協定を締結していた。

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1559120.html

要は船に基地局を乗せて海上から電波を飛ばすというもの。

今回の船上基地局はNTTとKDDIによるものなのでソフトバンクと楽天は対象外です。できれば全キャリアが協力してできればいいですね。

ドローン無線中継システム

ソフトバンクはドローンを使用した無線中継システムを運用するようです。

ソフトバンクは、石川県輪島市門前町の一部エリアで、「有線給電ドローン無線中継システム」の運用を開始した。

「有線給電ドローン無線中継システム」は、空にドローンを滞空させ、半径数kmのサービスエリアを構築する。2022年7月に実用化されたもので、長い時間、空を飛んで通信エリアを維持できるよう上空のドローンには光ファイバーケーブルと、地上の電力装置と結ぶケーブルがつながっている。これにより4日以上、通信エリアを維持できる。

今回の運用にあたり、行政への申請や、石川県の関係機関と連携している。

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1559136.html

ドローン単体で実現できるものではなく、衛星アンテナとつながった移動型基地局と光ファイバーラインで繋がっており、ドローンを使用して上空から電波を飛ばすというもの。

地上でそれなりの設備がいるのでどこでもOKというわけではありませんが、おもしろい試みではありますよね。ソフトバンクユーザーもこれで通信ができそうです。

こういった災害時におけるドローンの期待度は高いですね。

1月10日時点で一部復旧

1月10日時点で一部復旧はしてきているようですが、まだ不通のエリアが存在しているようです。

KDDIとソフトバンク、石川県能登町の通信障害が復旧(1月10日時点)
能登半島地震の影響により、石川県の一部地域で通信障害が続いている。原因は基地局の停電や伝送路の故障など。KDDIとソフトバンクでは、石川県鳳珠郡能登町の通信障害が復旧した。

大打撃を受けた地域は2週間近くネット環境は使えなくなると覚悟した方がよさそうですね。

どんなものでもリスクを回避する完璧なものはありません。できることはリスクを分散して軽減すること。手段をいくつか用意しておくことが大切ですね。

ペーパーレスを推進したいところですが、いざという時の書類は準備しておかないといけませんね。通信できずに情報を得られないといけませんし、そのために電気を使用するなら別のことに使いたいですしね。

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